garamanのマジック研究室

日本奇術演目大事典

2011年、奇術史研究家であり奇術史文献収集家でもある、河合勝氏によって「日本奇術演目事典」が刊行されました。自費出版されたこの一冊が、のちの「日本奇術文化史」や「近代日本奇術文化史」などにも大きな役割を果たしました。この重要な一冊は一般の販売経路に乗っていませんが、その後も再刊を目指して収集・編集が続けられていたようです。そして10年の歳月を経た2021年、「日本奇術演目大事典」として結実しました。

B5版860ページの大冊です。江戸時代を中心としつつ、現代(令和)までも含めた日本奇術を1054種扱っています。現象別・素材別・仕掛け別など、20章に分類して編集されているのが特徴です。1054種のうち、650種は図説を添えて解説し、残りの404種は原文の翻刻が掲載されています。扱っている奇術自体は既出の本とかなり重複しています。まとめ方がより洗練されていますので、現時点での決定版といったところです。また、特筆するべきは、あの「神仙戯術」の全文掲載です。小型横綴じ13丁(26ページ)の全ページが写真で掲載され、そのくずし字を活字化し、さらに現代語訳が添えられています。

19ページにわたる用語集は単なる用語の説明ではなく豊富な知識が詰め込まれており、読み物として読んでも勉強になる内容です。他にも38ページにわたる所載演目一覧では、代表的な40冊の伝授本を取り上げ、全ての演目名が掲載されています。

河合 勝
東京堂出版

レビュー

なし