garamanのマジック研究室

数学で織りなすカードマジックのからくり

2人の個性的な数学者が書いた珍しい本です。簡単なマジックの紹介から始まって、いつの間にか本格的な数学の世界に引きづり込まれ、気がつけば数理マジックを見る目が養われ、よりマジックの世界に引き込まれていく。そんな体験ができる本です。著者の一人はパーシ・ダイアコニス。ダイ・バーノンが [The Expert at The Card Table] を崇拝し、後に注釈本 [Revelations] を発行したときの編集を務めたのがパーシ・ダイアコニスです。14歳で家を出て、マジシャンとして世界を周っていたかと思えば、その後数学者に転身し、スタンフォード大学で統計と数学を教えるまでになります。シャッフルを8回やると完全にランダムになるというような法則を発表した事でも知られています。もう一人の著者はロン・グラハム。ベル研究所を退職後、カリフォルニア大学で組み合わせ数学の専門家として活躍しています。こちらも変わった人物で、数学とジャグリングの第一人者でありながら、中国語とピアノを練習する時間をつくってどちらも身につけてしまうという多才ぶりを発揮します。「どうやって時間を作ってるの?」と聞かれれば「簡単だよ。毎週168時間もあるじゃないか」と言い放つ人です。

数理トリックと言えばギルブレイス・プリンシプルが有名ですが、そのからくりを徹底的に解説するために、マンデルブロー集合やデブロイン系列などの数学的な知識を順序立てて説明してあり、マジックの勉強のつもりがついつい数学の方の魅力に引き込まれそうになります。また、数理的なマジックに貢献してきたマジシャンたちの経歴にも力を入れて紹介しています。アレックス・エルムズレイ、ボブ・ニール、ヘンリー・クライスト、スチュアート・ジェームス、チャールズ・ジョーダン、ボブ・ハマー、マーチン・ガードナーと、有名でありながらその人となりを意外と知らないマジシャンたちの姿を垣間みる事ができます。

Parsi Diaconis
Ron Graham
共立出版

レビュー

なし