garamanのマジック研究室

BEFORE WE BEGIN 〜始める前に〜

古くからあるマインドリーディングが、あらためて脚光を浴びるようになっています。これは、様々なスタイルのメンタリストが現れたことにより、その演技を目にする機会が増えていることから明らかですが、新しいデバイスの登場や、お手軽な似非心理学が社会に浸透したことにより社会がメンタリズムを受け入れやすい土台ができてしまったからなのかもしれません。本人しか知り得ない情報を演技中にずばりと当てて見せるために、事前に観客にアプローチすることについての是非が問われています。事前に観客に何かを依頼しておくのであれば「サクラ」と同じではないかという否定的な意見から、デックを特定の順番に並べておくのと同じだから効果的に使うべきという肯定的な意見まで様々です。

否定的な意見では「サクラ」と「Pre Show」の違いを混同している傾向が見られるので、この本ではその違いを明確にすることが大きな主題になっています。違いを知った上で内容を理解すれば、Pre Show は決して否定するようなものではないことがわかります。しかし、その上でなお、使い方次第では倫理的に正しくない事も簡単にできてしまいます。効果的だからこそ相手に強い不快感を与えてしまう可能性もある諸刃の剣です。あらゆる面において充分な配慮が必要な分野なので、人として未熟なうちに迂闊に手を出すべきではないとは思いますが、大人の余裕を持って演じられる人なら研究対象としてこれほど効果的な分野も珍しいでしょう。

Vanishing Inc. と Asi Wind 氏との契約により、日本での独占販売権を取得して、フェザータッチMAGICから出版された一冊です。

Asi Wind(著)
平賀 義達(訳)
フェザータッチMAGIC

レビュー

なし