The Magician And The Cardsharp
カール・ジョンソンの手による、ダイ・バーノンの生涯を綴った伝記です。出版前の紹介文からは、まるでダイ・バーノンを題材にした冒険小説が出版されるような印象を受けました。マジックに興味を持ちはじめた少年ダイ・バーノンは、あらゆるマジックのシークレットを探求し続けます。今のように簡単に本や DVD が手に入る時代ではありませんから、少年の手段は実に原始的で情熱的なものでした。自分の知らないトリックをこなせる少年が他にいるという噂を聞きつけては、その少年の家まで押しかけ、競馬場でいかさま賭博が行われているという噂を聞きつけた時には、何時間もかけて競馬場に行き、その手口を見破るまで帰らなかったそうです。そんなバーノンの運命を大きく変えたのが、「The Expert at the Card Table」というプロのいかさま師 S.W.Erdnase が書いた本です。既にカードマジックの世界にどっぷりと浸かっていたバーノンが、当時のプロマジシャン達でさえ注目していなかったこの本を手にして、ギャンブラーのテクニックこそカードマジックの原点である事に気づくのです。
決してギャンブラー達から漏れる事のない、数多くのシークレット。それを手に入れるために、バーノンはギャンブラー達と心を通わせ、直接彼らから様々なシークレットを吸収していくのです。そんな中、センター・ディールというテクニックを使いこなすギャンブラーがいるという噂を聞きつけますが、その技はマジシャンの間では不可能とされていた技でした。そのうえ、センター・ディールを使いこなすというその人物は、ギャンブラー達の間でさえ噂の域を出ない幻の存在だったのです。この幻のギャンブラーを捜し求めセンター・ディールのシークレットを手に入れるため、バーノンの長い旅が始まります。。。
出版前の紹介文が冒険小説のようになってしまうのも仕方がないのかも知れません。バーノンの人生そのものが、まさに冒険小説のように華やかでエキサイティングだったのですから。間違いのないように、ここでハッキリさせておきましょう。この本はノンフィクションです。
生きる伝説だったダイ・バーノンも1992年に惜しくもこの世を去りましたが、この本と共に、その伝説は永久にマジック界に生き続けることでしょう。
レビュー
なし