garamanのマジック研究室

アブラカダブラ 奇術の世界史

紀元前から20世紀までのマジックの歴史を辿った読み物です。昭和63年6月から平成2年8月までの間に、京都新聞に毎週連載されていた同名の記事が元になっています。著者の前川道介氏は、ドイツ・ロマン主義の研究と平行して、19世紀の文化史を調べていた時にA.C.ヴィルスマンの「のこぎり引きにされた乙女」という本に出会い、奇術書を集めだしたそうです。奇術史を連載するにあたり当然の事ながら実に多くの本を参考にされています。奇術の歴史に触れた本は非常に数が少ないため苦労されたようですが、巻末の参考文献リストは圧巻です。もちろん松田道弘氏や高木重朗氏の本も参考文献に名を連ねていますが、アレキサンダー・アードリンオンやミルボーン・クリストファーらの本から拾われた情報も多く、興味深い出来事がたくさん書かれています。巻末の参考文献の49冊のリストのうち22冊までが洋書です。

写真やイラストも豊富で300ページ近い充実のボリュームです。「奇術史」と銘打ってはありますが、その全てが事実というわけではなく、まるで事実であるかのように語り継がれてきたことも含まれていますので、あくまでも読み物としてその世界観を楽しむのが正しい姿勢でしょうか。

前川 道介
白水社

レビュー

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