garamanのマジック研究室

人の心を自由に操る技術 〜 ザ・メンタリズム 〜

前著「誰とでも心を通わせることができる7つの法則」からわずか5ヶ月。早くも2冊目が刊行されました。今回はDVDも付属して、著者本人の実演も見られるようになっています。内容は前作よりも分かりやすく、平易な文章を心がけているように感じました。基礎編を読んでいる印象では中学生くらいを対象としているように感じましたが、応用編では「仕事を思いのままに操る」「恋愛を思いのままに操る」という2本立てになっていたので、いまいちターゲットが良く分かりませんでした。ビジネスシーンについては、前著よりも拙い印象を受けました。ビジネスマンならある程度は他のビジネス書を読んでいるでしょう。そんな人ならこの本に載っているようなちょっとしたテクニックは知識として持っています。そんな人たちの前でこれ見よがしにテクニックを盛り込んでも、無意識に働きかける効果は期待できません。相手がどれ程の人生経験を積んでいるかも分からないうちから、コントロールしようなどと思わない方が良いでしょう。プレゼンにおいても、内容よりもテクニックや演出に力を入れるような人は、すぐに見破られます。これは聞き手が心理学に精通していなくてもです。「内容薄いなぁ」と感じる人の方が多いはずです。内容の薄さをテクニックで補うのは止め、内容を充実した余力でさらに良いプレゼンを目指すというときにだけ使うのが、良いバランスだと思います。

また、今回は恋愛におけるメンタリズムの活用方法が30ページ以上に渡って解説されていますが、個人的にはビジネスシーンよりも不快な印象を受けました。例えば「恋人のいる相手を落とすテクニック」や「うまく別れを切り出すメンタリズム的方法」など、自分がモテたい、嫌われたくない、という思いからくるものばかりです。相手を幸せにするようなテーマが1つもありませんでした(念のため読み返しましたが、本当に1つもありませんでした)。極めつけは「知り合いの男性(Hさん)に片思いしている、これまた知り合いの女性に対して、自分に好意を持つように仕向けて付き合った事がある」というような事を自慢げに書いているところです。姑息な事に「Hさんのこと、好きでしょ?よかったら相談に乗るよ」と声をかけるところから始まって、最終的に自分が付き合うという事を、確信犯的に実行したようです。メンタリズムの悪用としか思えません。しかも、悪用したところで最終的には嫌われるでしょう。

期待していただけにとても残念でした。ただし、まだ学生である事も考えるとポテンシャルは秘めているような気がします。著者自身が成長し、様々な場面を実際に経験すれば、より充実した内容の本が書けるようになるはずです。数年後に振り返った時、この本が、成長過程のメンタリストが書いた興味深い1冊になる事を期待します。

DaiGo
扶桑社

レビュー

なし