芸術を創る脳
芸術とは何か?という話になると、そもそもの定義が曖昧なので色々な意見が出てくるものです。しかし、ハッキリしている事が1つあります。それは、誰かの脳がそれを受け取って初めて成立するものだという事です。つまり送り手側の脳よりも、受け手側の脳に起こる現象なのです。誰かが発信しそれが誰かに届いたときに成立するという性質は、言語と似ています。実際、芸術とは言語と同様のコミニュケーションツールであると主張する人もいます。
この本の著者はもっと踏み込んで、人間が芸術を生み出す能力は言語脳と密接なつながりがあるのではないかという視点で解明を試みています。自身の専門分野である言語脳科学を用いて、いくつかの分野の芸術性について理解を深めていくために、各分野のスペシャリストとの対談を行うという、ありそうでなかった本です。ポイントは芸術という幅広い世界から選ばれた4つの分野です。「音楽」「将棋」「マジック」「絵画」。著者も造詣の深い4分野であるだけに対談内容も深く有意義なものになっています。将棋とマジックが芸術か?という疑問をもたれる方も多いかと思いますが、対談の内容を見れば納得できるのではないでしょうか。
マジックの分野では前田知洋氏との対談が掲載されています。世界的に評価が高いのはもちろんですが、日本での評価も高い事を考えると、日本に特有の感性に対しても的確に分析・対応されている事が伺えます。自分の脳をどう使うかではなく、相手の脳にどう届けるか、そんな視点を感じます。
居合道や合気道を行っている時の前田氏の写真も掲載されていますが、この対談内容だからこそ提供されたものだと思います。前田氏のマジックの世界観を作り上げている根幹に触れる貴重な対談です。
レビュー
なし