ゾウを消せ
1800年から1950年くらいまでの期間は、マジック史における激動の時代でした。ろうそくの灯りだけが舞台を照らすような薄暗い状況で、黒ずくめの装束に尖がり帽子といった漫画の世界の魔法使いのようなマジシャンが黙々と演技を続けていた時代から、ステージ上を煌々と照らし燕尾服を着こなした紳士が颯爽と演技をする時代へと大きく変わっていったのです。著者のジム・ステインメイヤーは、プロ・マジシャンの間では世界的に知られる人物で、デビッド・カッパーフィールドやランス・バートンといった有名マジシャンのショーを多数企画してきました。また、過去の作品の研究家としても知られ、歴史やその技術を解説した著書を多数出版しているそうです。そんな著者が長い間謎解きに悩まされきた「ロバの消失」トリック。そのトリック解明の鍵となるのが、フーディーニの「ゾウの消失」トリックでした。当時を彩るマジシャン達のトリック開発に掛ける情熱と、マジシャン同士の熾烈な争いを克明に記した歴史考察本でありながら、「ゾウ(ロバ)の消失」トリックが徐々に解明されていきます。
「ゾウ(ロバ)の消失」以外にも、いくつかのステージマジックをイラスト付きで解説していますが、単に「トリックが知りたい」という人には向かないと思います。ハリー・フーディーニ、ハワード・サーストン、ジョン・ネヴィル・マスケリン、ジャン・ウジェーヌ・ロベールウーダンといった名前に興味がある人には最適でしょう。本書では、当時のマジシャンの中からおよそ25人のマジシャンが登場します。
レビュー
なし