garamanのマジック研究室

ファンタジウム

発達性ディスレクシア(読み書き障害)を持った少年の逞しくも健気な姿を映し出した、心の琴線に触れる素敵なストーリーです。手品師・龍五郎に可愛がられていた少年は、その類まれな才能を見出され、13歳にしてすでに天才的なマジシャンとしての素質をのぞかせています。マジックのレッスンの合間に習ったギャンブルテクニックも習得していた少年は、龍五郎の死後、カジノバーで日銭を稼ぐほどの実力を発揮していました。カジノバーの店長は、イカサマが横行している可能性を懸念して、セキュリティーを強化しようと思いつきます。店長の依頼を受けてカジノバーに赴いたセキュリティー会社の北條英明は、偶然にも手品師・龍五郎の孫でした。偶然の出会いの瞬間から、北條は少年の不思議な魅力に引き込まれていきます。北條のひたむきな姿に徐々に心を開いていった少年は、発達性ディスレクシアという障害と共に、一流のマジシャンへの道を歩みだします。

社会問題的テーマを投げかけてくる作品でありながら、キャラクタの個性によって、少しも押し付けがましくなく軽快に描かれています。素直に心に響いてくる作品です。素晴らしい。

マジックのシーンがあると、漫画でもドラマでも映画でも、説明じみた無駄なシーンや、これ見よがしなテクニックが披露されがちです。また、あるトリックをしっかり説明しておかないと、後の展開が分からないという作品も多いため、どうしてもタネの解説が入ってしまいます。しかし、この漫画ではそういったシーンは出てきません。さりげなく描かれるシーンの細かな手つきをよく見ると、明らかに本物のテクニックを知った上で書かれているのが分かるのです。かといって、そんな事は知らなくても全くストーリーには影響しません。マジシャンもノン・マジシャンも違和感無くストーリーに入り込める漫画です。何より、登場人物の心の描き方がうまい。そして、読者の心の揺さぶり方が絶妙。私のように普段漫画を読まない人にもお薦めです。

杉本 亜未
モーニングKC


全9巻です。

レビュー

なし