garamanのマジック研究室

ロートケプシェン、こっちにおいで

[午前零時のサンドリヨン] の続編です。2011年に発行されました。前作でもすでに完成度の高さが話題になっていましたが、とても読みやすい文体で、目に訴えるというより耳に届いてくるような印象を受けます。その筆致は、読者を作品世界に自然に導いてくれます。扱うテーマも日常のありふれた出来事で、誰もが経験してきたであろう事が綴られています。記憶に残るというより、思い出に残ってしまいそうな程、スッと心に届きます。まるで自分が体験しているかのように。血の出ないミステリ。でも心を残酷に傷つけてしまうこともある日常の一場面を、謎解きしながら軽快に解決していく爽やかな作品です。私はてっきり前作で完結したものと思っていましたが続編でした。しかも、今作では「マジシャン・酉乃初の事件簿、第二幕」と銘打たれています。もしかすると、今後も続いていくストーリーなのかもしれません。

物語は前作の数日後のお話。相変わらずクールで物静かな、高校一年生の酉乃初。そしてちょっと優しくて、ちょっと間が抜けてて、どこにでもいそうな普通の男子、須川君。須川君の周りで起こるありがちだけどデリケートな問題。当事者の気持ちを思うと、軽はずみに首を突っ込むことも出来ない。そんなもどかしさの中、触れられないからこそ残ってしまう謎。酉乃は、そんな謎を解くことで、傷つく人の心を癒していく。

前作では、酉乃と須川の心の距離がなかなか縮まらず、そっちの方が気になる読者もいた事でしょう。今作では、酉乃がマジックを演じているレストラン・バー「サンドリヨン」に、イケメン・マジシャンも登場してしまい、さらに気になる展開になっています。

相沢 沙呼
東京創元社


2015年に文庫版も出ました。

相沢 沙呼
東京創元社

レビュー

なし