garamanのマジック研究室

ミスター・セバスチャンとサーカスから消えた男の話

1954年、アメリカ。サーカス団の一員として活躍した「黒い魔術師」ヘンリー・ウォーカーが、ある日忽然と姿を消す。サーカス団の名前は「ジェレマイア・モスグローヴ・チャイニーズ・サーカス」。中国人が1人も在籍していないのに、言葉の響きだけで決めてしまったこの名前が物語るように、その実態は見世物小屋。「全身毛だらけの男」「大デブ女」「怪力男」といったメンバーに囲まれたヘンリーは「黒人マジシャン」だった。人種差別の色濃く残る時代に、肌の黒いマジシャンが物珍しく扱われ、だからこそありつけた職業。しかし、黒い魔術師でいることが彼の心の拠りどころでもあった。そんな不遇の彼の人生は、子供の頃に交わしたある魔術師との「血の契約」に始まった。以来、秘密を抱え続けた黒い魔術師ヘンリー。次々に明らかになるその秘密とは。

この作品の特徴は、なんと言っても章の構成。物語の途中から、ヘンリーを知る人物達が語り部となり、彼の人生を語り始めます。同じ人物を表現していながら語り部によって違った姿のヘンリーが現れ、次第に真の姿が浮き彫りになっていきます。著者のダニエル・ウォレスは、ロサンゼルス・タイム誌でイラストレータを務めながら、文芸誌に作品を発表していた小説家でもあります。その後ノースカロライナ大学で教鞭をとるなど、多彩な人物です。とにかく、心の描き方が秀逸。

Daniel Wallace
川副 智子(訳)
武田ランダムハウスジャパン


単行本も出ました。

レビュー

なし