魔術師(イリュージョニスト)
ニューヨークのマンハッタン音楽芸術学校で一人の女性が殺害された。現場に駆けつけた二人の警官。二人はロビーに転がる無残な被害者の姿だけでなく、その傍にしゃがみこんでいる凶悪な犯人を目撃する。しかし、閃光と共にその場を離れた犯人は、リサイタルホールに逃げ込み、別の人質をとって立て籠もった。メインの出入り口と予備の出入り口には二人の警官が貼り着き、中の様子を伺う。密室となったリサイタルホールからは犯人の怒鳴る声が聞こえる。「入ろうとしてみろ、この女の命はないぞ!」そう叫ぶ犯人に対して出入り口を固めた警官たちはなす術もなく、様子を見守るしかなかった。そんななか、無情にも中から大きな銃声が響き渡る。そして静寂。最悪の展開を想像して、中に踏み込むが、そこには犯人はおろか、人質の姿さえなかった。その後も次々と起こる不可解な事件。犯人はいつも確実に目撃されているにもかかわらず、現場からやすやすと逃げおおせる。
ニューヨーク市警の名コンビ、リンカーン・ライムとアメリア・サックスを始めとする市警の面々は、次々と起こる不可解な事件にマジックの要素が取り入れられていることに気がついた。マジックの知識が必要となった市警は、実力を備えていながら見習いに甘んじている女性マジシャン、カーラに協力を仰ぎ、謎の犯人「魔術師」との騙し合いが始まった。
ジェフリー・ディーヴァーのシリーズ第5作目とあって、ライムとサックスの名コンビぶりは完成度を増しています。また、彼お得意の大どんでん返しはさらに威力を増しています。登場人物同士のミスディレクションの掛け合いを楽しんでいたら、自分自身もまんまと誤導されているという心地よい騙しを何度も味わえます。
幾つかのどんでん返しを経て、すべての事件の全貌が白日の下にさらされ、犯人の思惑も明らかにされて逮捕される。解決としか言いようのない状況になっても、まだ1/3ほどページが残っています。ここからがこの作品の真骨頂。面白い。
電子書籍版もあります。
レビュー
なし