garamanのマジック研究室

Incomplete Works

こざわまさゆき氏の 1st 作品集です。2011年にマジックハウスから初版が発行され、在庫が底をつきかけたところで、プリント・オブ・デマンドのサービスを利用して Amazon に置かれることになりました。また、改訂版ではあるものの、初版購入者にさらなる負担をかけるのは著者の本意ではないとのことで、奇術的内容はほぼ変わらず、誤字・脱字の修正程度に留めているあたり、著者の人柄が表れています。

内容は、コインマジック12作品、カードマジック6作品、そしておまけのルーティンが3つ収録されています。コインマジックについてはマニアを唸らせる名手順ばかりです。「コインを使ったメンタルマジック」や「左利き用専用のコイン」など、発想が秀逸なのも特筆すべきでしょう。カードマジックについては、[Any Card At Any Number] や [Out of This World]、「Ambitious Card] など、名作に手を入れて氏独自の味付けを施してあります。挑戦的というか実験的というか、面白い試みでありながら、どれも実用レベルにまで昇華させているのはさすがです。最後におまけの3作品ですが、章のタイトルに「The Trick That Cannot Be Performed(実演できないトリック)」と銘打たれています。「高度な計算を暗算しながら実演する作品」や「使う道具の調達が大変すぎる作品」「文章だけで説明したリンキング・リング」など、理由は様々ですが、その問題さえクリアできれば実演できます。

ところで、とってもマニア向けです。初心者が買っても到底理解できるものではありません。基礎的な知識はすでに持っていて、本文中にマジシャンや本の名前が出てきても「あぁ、あれね」とサラッと理解できるレベルでないと、ついていけません。しかも、ほとんど挿絵がありませんので、文章だけで想像力を働かせて読み進めていける人でないと苦しいと思います(とは言うものの、映像集も出ていて、そちらでほとんどの作品は演技が見られます)。全体的に文章が洒脱で読んでいてい面白いのも特徴です。さらに、参考情報が豊富で、周辺知識が大変参考になります。それにしても、著者が自ら「Inconplete Works(不完全な作品集)」とうたっているのです。これで終わるはずがありません。「Complete Works(全集)」が出るのを首を長くして待ちましょう。

こざわまわゆき
NextPublishing Authors Press

レビュー

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